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3.11、リーフに乗っていて
わかったこと、感じたこと

日産リーフ試乗記~非常時編~

 文=北森涼介
写真=五條伴好

図らずも試した非常時のEVの実力

日産本社からリーフを借り出し、横浜市内の観光名所を走り回っていた3月11日、急速充電器で充電でもしてみようかと首都高速の大黒PAで急速充電器の空き待ちをしている最中、はるか上方の高速道路の橋桁が鳴きだしたのは午後2時50分頃だったと思う。お寺の鐘が連打されるかのごとくゴーン、ゴーンと橋桁が鳴りだした。と、その時、足元がふらついた。寝不足で目眩でもしたか?  と思ってると、レストランが入っているビルの窓ガラスがふくれあがったかと思えばギシギシとうなり出し、地面からはゴーっという音が響きだす。この時、初めて地震だと認識した。その揺れはかなり長く、気を抜いていると立っていることもままならない。足元を見れば、アスファルトの継ぎ目に5cmほどの隙間ができている。これも地割れというのだろうか。そんなことを思っている刹那、揺れが止まった。その瞬間、アスファルトの隙間がなにごともなかったかのようにピシッと閉まった。恐怖を感じた。もしこの隙間に指でも挟もうものなら……。

 

 

この地震はかなりやばいっ!  そう確信し、すぐにリーフに乗り込んだ。とにかく高速道路を降りようと横羽線方面へ向かい、浅田ランプから産業道路を経て第一京浜へと進んでいった。一般道は地震発生から15分とたっていないにもかかわらず、すでに交通は麻痺していた。原因は鶴見周辺の大停電による信号機の機能停止。停電の中を走る電気自動車とはなんとも皮肉なものである。こんなきっかけで、リーフのあまり語られない利点を痛切に感じるとは思いもよらなかった。それは渋滞にすこぶる強いこと。渋滞で停止していても電費、内燃機関のクルマで言えば燃費にまったく影響がないのだ。アイドリングストップ付きのエンジン車であろうとも渋滞ではエンジンの停止、再始動においての燃料消費が無視できない。アイドリングストップがついていなければ渋滞での停車中はエンジンが回りっ放しである。リーフにはそもそもアイドリングの概念がないために、空調を止めさえすれば速度0km/hでは走行用の電池を消耗させることは、ほぼない。フルセグメントの地デジテレビで音声を聴きながら、とにかく横浜高島町の日産本社へと急いだ。

 

EVと電力需給について

東日本大震災では、原発事故や計画停電など、いまさらながら電力というものを真剣に考えさせられる機会が多い。夏と冬でピークタイムが違うなどということは、我々にとって初めて知る事柄ではないのだろうか。世間はひたすら節電に動き出している。そんななか、電気自動車には向かい風が吹くだろう、という思いを持たれる方は多いはずだ。満充電で一般家庭の1日分の電力を使う電気自動車なのだから心配になるというのは人情である。しかし、東京電力から発表されるリアルタイムの電力使用状況を見ればわかるように、午後10時から午前6時までははっきりと電力消費量が少ない。発電所は、原子力はともかく火力発電でさえも、一度運転を開始してしまうと、出力調整はできるものの、運転を止めることは容易ではない。止めずに回しておくほうが効率的であるとも言える。だからこそ深夜電力という発想で割引料金を設定しているのだ。つまり、この時間の充電は、電力の需給に大きな影響を及ぼさない。しかも、リーフの場合、コンセントを挿しっ放しにしておいても車両側のタイマーで希望の時間に充電ができる。この希望時間を電力消費量の少ない時間に設定しておけば、電力網全体の時間帯負荷を分散させることができるのだ。

 

ただし、電気自動車全般に言えることだが、現在の電力供給が脆弱な状態において、昼間の時間帯の急速充電器の利用は避けたほうがいい。住宅1世帯分の電力を30分で充電してしまうということは、脆弱な電力インフラ下にあっては、暴力に他ならない。電気自動車の充電の基本は、夜間時間帯に家庭で行われる200V充電である。この基本をわきまえれば、石油インフラよりも先に復旧されることの多い電力インフラに対し、余計な負荷を与えることなく有効に活用し、移動の確保にも十分に対応できるといえよう。

 

日産のEV普及に対する本気度

話を日産リーフに戻そう。リーフの特筆すべき点は、クルマ自体もさることながら、充電ケーブルに安全装置を設けたことである。これは断線やショートなどで充電ケーブルにトラブルが発生した場合に建物側、自動車側の安全装置に頼ることなく独立して電気を遮断する。これにより感電や火災の危険性が激減するのだ。クルマから外された充電ケーブルをそのクルマが踏みつけて断線することなどは十分考えられる。そのような事態を想定した安全装置がリーフ以前の電気自動車の充電ケーブルには施されていなかった。充電ケーブルの危険性はまったく無視されていた。この点に関しては、リーフが優れているというよりも、それまでの電気自動車が電気を“なめている”と言うべきだろう。

 

また、リーフから以降、充電ケーブルのコンセント差込プラグが、丸型から平型へ変わった。リーフ以前の電気自動車に多く使われていた丸型プラグは頻繁な抜き差しに対応しておらず、その耐久度はなんと100回程度であった。リーフ以降の平型プラグは頻繁な抜き差しに対応し、その耐久性は1万5000回。抜き差しの限界よりもクルマの限界が先に来るほどの安全性を担保している。このあたりからも、リーフが普及を目指した初めての電気自動車だと言える。平型プラグの規格策定について、日産はかなりの割合で強く関わっているという。電気自動車に対して真摯に取り組む姿勢が伝わってくると思うのだが、いかがだろうか。

 

エネルギーを選んで買う時代がくる?

リーフに限らず、電気自動車の充電に使われる電力は電力会社から供給される商用電力にこだわる必要はない。意外と知られていないことであるが、平成15年から50kw以上の契約電力であれば、既存の電力会社以外から電気を購入できる「電力自由化」が既に実施されている。50kwとは高容量の急速充電器1台分の契約電力である。電気というものは作り出すエネルギーである。その作り方は原子力、火力以外にも水力、風力、太陽光などさまざまなものが考えられる。創意と工夫があれば、我々の考えが及びもつかなかったところ、たとえば振動や潮の満ち干きなどからでも発電が可能だ。今回の震災と原発事故の影響で、どうやって生み出された電力かを気にかける消費者も増えるだろうが、急速充電器を導入できれば、原子力や火力を使わない電力を選んで購入し、車両に充電することも可能は可能だ。

 

内燃機関のクルマはガソリンなど化石燃料に頼らざるを得ないが、電気自動車は、その多様な発電方式により、震災や中東情勢によるエネルギークライシスを迎えた場合でも、まだまだ走ることの出来る余力がある。震災の翌週、ガソリンスタンドに出来た長蛇の列に並んだガソリン車の窓から、私は、ごく普通に走る日産リーフを見た。

少しだけ、本当の未来を見た気がした。

 

 

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